80年代的な漫画「東京ラブストーリー」に代表される、(もう今では口にするのも恥ずかしい)バブル期のトレンディドラマの原作者として、紫門ふみは有名だ。でも実は、トレンディドラマの原作者という部分に個人的には大きく「?」が付く。
テレビドラマ以前の紫門ふみ
なぜなら、他の代表的な漫画「女ともだち」や初期の「11月でも花火」、そして何よりも当初から変わらぬ荒削りな画風…それらを思い浮かべると、「トレンディドラマぁ?」などと思ってしまうのだ。
もっともその頃の紫門ふみの漫画を読んでいる人と、それらのドラマを介して紫門ふみの漫画を読み始めた人との間には、深い深い溝があると思うのだけれど。。。
でも、「東京ラブストーリー」にも紫門ふみの漫画のエッセンスは隠されている。それに気がついた人は、橋をかけてこちら側へ来てもらえるかもしれない。
ともあれ、紫門ふみの漫画にはトレンディドラマとは違う味わいが、たっぷり入っているのである。
紫門ふみの読みどころ
紫門ふみの「紫門」は、なつかしのサイモンとガーファンクルのポール・サイモンから来ているそうで、名付け方がとても70年代の人っぽい。でも実際のところ80年代の漫画を主に動かしていたのは、70年代に学生だった人たちなのだ。
だから…とつながるのかどうかわからないのだけど、余計に、紫門ふみが「トレンディドラマぁ?」などと思ってしまうのだ。(多少偏見が入ってます。ハイ)
じゃあトレンディドラマとは離れたところで、紫門ふみの漫画でどこがよいのか?というと…
紫門ふみの漫画の読みどころは、「強がり」という感情の描き方だと思う。
それは、とてもやけっぱちで、引き攣れていて、自分勝手で、意固地で、哀しい。そんな感情を、紫門ふみが描くとジンと響く。
私は、紫門ふみ原作のドラマをよく覚えていないし、そもそもちゃんと見た覚えもないので、その辺の表現がどう転化されていたのかよくわからない。ただ何かしら違和感を覚えたのは確かだった。
しかし、今となっては「トレンディドラマ」って恥ずかしいなぁ。
オススメは「女ともだち」
紫門ふみの私のお勧め漫画は「女ともだち」である。どこかドライさが漂い、現実味バリバリの女性たち。旦那の弘兼憲史の漫画「人間交差点」の方がよっぽどウェットだ(というよりベタベタだ。笑)。
うろ覚えで申し訳ないのだけど、この漫画はヤンマガに連載されていたはずだ。つまり読者は主に男性だったはず。
でも、そのころの上司にこの漫画を貸したら「嫁さんが、面白いからもっと読みたい」って言ってたらしい。つまり、女性の言い分を男性誌で連載していた…という当時としては奇跡的な出来事だった…と思う。
よく紫門ふみの漫画は「恋愛論」的な部分で取りざたされるけれど、「女ともだち」は、それよりも「女性とは、こうなのよ」という主張のほうが強いような気がする。
「女ともだち」は女性の話だから当然「恋愛」を軸に描かれる場合が多いのだけど、それよりも「恋愛」も含めた彼女たちの生き方とか、人生とかのほうがテーマとして大きかったように思う。
紫門ふみの漫画のドライさが、男性にも受け入れやすかった…というのは間違いないと思う。
でもそれよりも、「女性とは、こうなのよ」と主張しても「だから分かって」的な部分が少ないところが、男性誌で連載できたポイントなのかもしれない。
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